ニクアツベニサラタケ(ベニチャワンタケ科)

Phillipsia cf. domingensis (Berk.) Berk.   
Sarcosomataceae Pezizales Pezizamycetes Ascomycota

2011年10月2日 横浜市新治市民の森
過去10年間にこの地域での出会いの記録は1回しかない。私にとってはしばらくぶりでの顔合わせとなる。神奈川県博で3年前この種の同定のレポートを作成する段階で胞子の表面の条線の数により種名が違うことが判り挑戦した。コットンブルー試薬などを用いたが、不鮮明で解らずギブアップしてしまった。後日城川先生に問うたところ、先生の手持ちの標本でメルツアー試薬が良く解るとのお教えを頂いた。以下その時未完成に終わった菌類誌のレポートの一部である。

発生夏から秋にかけて湿地などの腐朽木、枯枝などに生える。子嚢果の径は2cm程度から3cm程度位までで、柄はないか又は短い。子嚢盤はえんじ色から暗赤色で浅い椀状、外皮は汚白色。
【顕微鏡的特長】:子嚢は円筒形であり、250475×17.520.0μm、頂孔はヨードで− 8胞子を縦に1列に並ぶ。子嚢胞子は非対称楕円形で両端も丸く2125×1012μm厚膜である。一表面には57本の条線が見られる。側糸は糸状で隔壁を数個もっており、〜475×1.2μm。先端がやや太くなっているものもある。
ノート】:Phillipsia chinensis W.Y.Zhuang は胞子の一表面7〜11本の条線が見られるとの記載がある。Phillipsia domingensis (Berk.) Berk. 35本の条線、側糸は分岐しているものもあるとの記載がある

胞子の縦線は非常に見ずらく、メルツアー試薬で明瞭にみられた(城川四郎氏のご指導による)。子嚢が大きい点、条線の数、分岐などPhillipsia chinensis.Zhuang と似ている。Phillipsia 属については7種が報告されており今後の検討事項であると考えられる。
参考文献:原色日本新菌類図鑑U(保育社)1998、日本産盤菌綱菌類(大谷吉雄)Mycol.Soc.Japan31,日本産ベニチャワンタケ亜目(大谷吉雄)日菌報Mycol.Soc.Japan21:149-179,1980,ReDispositions of Phillipsia Pezizales) collections from China (Wen-Ying ZhuangMycotaxon 86291,2003